これからのカナンの園について語り合おう

カナンの園は、先達による「夢」と「志」により創立されました。それから約50年、奥中山学園から始まったカナンの園は、現在10の事業所等を運営するまでになりました。これまで創り上げてきたものを大切にしつつ、時代や社会のニーズに応えること、利用者の高齢化等への対応、職員の確保と育成、多様な働き方など、以前とは違った課題、悩みを抱えながら職員は働いています。
そこで、カナンの園で働き始めて7、8年目の若い同世代の方々に集まっていただき、ご自身のことやこれからのカナンの園について語り合っていただきたく座談会を企画しました。

出席者 田之岡篤礼(奥中山学園)
成谷 廉(ののさわ事情所)
澤村 裕香 (ヒソプ工房)
高橋 葵(となんカナン)
司会 戸来 正樹(三愛学舎)

司会

今日はお集まりいただき、ありがとうございます。早速ですが、まずは自己紹介と最近の楽しみをお聞かせください。

成谷

ののさわ事業所支援員として2年目です。その前は、小さき群の里で6年間支援員をしていました。最近の楽しみは、一時期色々あって食欲がない時期がありましたが、最近食欲も出てきてご飯をかみしめて食べています。ご飯が美味しく食べられることが幸せです。

田之岡

昨年度まで、ののさわ事業所で6年間支援員、今年度から奥中山学園で支援員をしています。最近の楽しみは、晴れた日に県北、青森県方面の景色を見ながらバイクでツーリングすることです。また、奥中山学園の子どもたちの成長ぶりが日々楽しみです。

高橋

今年度4月から、となんカナンで支援員をしています。その前は、カナン牧場で4年間、ののさわ事業所で2年間支援員をしていました。最近の楽しみは、滝沢市に引っ越したので、近所を散策し道を覚えることです。

澤村

ヒソプ工房で生活支援員2年目です。その前は、奥中山学園で4年間、となんカナンで2年間支援員をしていました。最近の楽しみは、USJのホラーナイトの動画をひたすら見ることです。

司会

ありがとうございました。みなさんの様子がわかり親近感がわきました。それでは、カナンの園で働くことになったきっかけを教えてください。では澤村さんからお願いします。

澤村

誰かの支えになりたということが根本にあり、福祉にも興味があって、どこで働こうかと考えていました。カナンの園の方が就職説明のため大学に来校した際に話を聞き、また、他の就職活動の際にもカナンの園を紹介され、カナンの園という名前がよく耳に入るので、働いてみようかなと思い決めました。

田之岡

田之岡 高校生の頃から人の役に立ちたいと思っていました。ずっと剣道をやっていたので、消防士、警察官になることが目標でしたが、他にも役に立てることがないか考え、福祉を目指してみようかと思いました。企業説明会でカナンの園を知り、また、自分の親戚に福祉関係の仕事をしている人がいて、「カナンの園がいいよ、勉強になるよ」と勧められ、働こうと思いました。

成谷

私は、特別支援学校の先生を目指していましたが、教育実習など行ってみて、自分に合わないと思いました。自分の家族に障がいがある者がいることもあり、福祉に興味をもちました。北上市の施設でボランティアなどをしながら就職を考えている時、企業説明会でカナンの園の話を聞き、生活の場、日中活動の場もあって、いろんな経験ができると思いました。また、キリスト教の考え方は通っていた大学でも重んじており、好きだったのでそれもあって、ご縁があるかなと思ってここに決めました。

高橋

私は、親戚に障がいがある方がいたり、家族が医療系の仕事に就いていたりして、医療とか福祉が小さい時から身近にありました。私もその流れで興味を持つようになって、ボランティア活動をしていました。専門学校で勉強する中で、障がいがある方と関わりがないことで差別や偏見につながっていくのではないかと思うようになりました。学生時代にソーシャルワーク実習でヒソプ工房に行き、それがカナンの園との出会いでした。どこに就職しようかと思っていた時に、カナンの園三本柱の一つである「共に学び、共に育つ」に共感し、私も一緒に成長したいと思いカナンの園を選びました。

司会

ありがとうございました。それでは、今の仕事内容や利用者との関わりについて教えてください。

成谷

生活を支援しています。ののさわ事業所の方々は、高齢化による運動機能の低下もあり、本人が出来ない部分の支援はもちろんですが、環境配慮にも心掛けています。また、健康観察に特に気を付けています。体調不良を訴えることが出来ない方もいますので、私たちがどれだけ気付けるかという部分はすごく大事にしています。

司会

司会 みなさん、生活施設の経験があるので、なるほどといった表情で聞いていましたね。

高橋

私は今、となんカナンで軽作業課に所属しています。封入やポスティング、よ市の販売に携わっています。まだ4月に異動したばかりなので、自分の仕事を覚えて、みなさんのことを知っている段階です。

田之岡

奥中山学園1年目ですが、子どもたちの生活を支え、見守っています。特に大事にしているのは命を守るということです。食器洗い、洗濯、友達との距離感、一人ひとり課題があるので、どう改善していくかがこれから生きていく中で大切なことだと思うので、将来につなげていくために、どう声掛けや支援していくかを模索しています。また、家庭の事情で週末や長期休みに自宅に帰ることができない方もいるので、学園での生活が充実したものになるように、お出かけや一緒に活動することを心掛けています。

澤村

今はグループホームのワーカーとして働いています。4つのホームを生活支援していす。これまで経験してきた所に比べると自立度は高い方々が多いですが、情緒面の安定を図ることが求められ、日々葛藤しながら関わり方を模索し過ごしています。

司会

司会 なるほど。事業所によっていろいろな喜び、苦労があるのだと思い聴いていました。次は、これまでこの仕事してきて良かったこと、やりがいを感じたことを話してください。

全員

えー。なんだろう…。

澤村

では私から。奥中山学園で働いている時に「ありがとう」「ごめんなさい」などがなかなか言えない子がいて、繰り返し伝え、行動で示してきたけれども、なかなか積みあがらないなと思い、難しさを感じていました。そんなある時、こちらから促さなくてもその子から初めて「ありがとう」と言ってくれたことがありました。積みあがらないと思っていたけども、これまでの関わりは無駄ではなかったと思った時、やりがいを感じました。

田之岡

すごくいい話ですね。その方はそれ以降、どうなったのですか。

澤村

ぐんぐん学校に通えるようになり、学習面でも成長しました。環境って大事なのだと思いました。奥中山学園つながりで、田之岡さんからも聞きたいです。

田之岡

学園の話しではないのですが、さっきの話とちょっと似ていて、ののさわ事業所で最初に携わったホームの話です。業務を終えて帰ろうとした際、「田之岡さん、ありがとう」と利用者の方から声をかけられたことがありました。その方は、普段あまり本人からは話しかけてくることはなく、まして私に感謝の気持ちをストレートに話してくれたのが初めてだったと思います。 また、現在の奥中山学園のことでは、入園時、困っていることを話せなかった子が、半年かけて徐々に心を開いて職員に悩みや困ったことを話せるようになったことです。子どもたちの成長が著しく、楽しく、やりがいを感じています。

高橋

私は、作業で利用者さんと関わることが多いので、どうやったら作業ができるかを一緒に考え、できるようになって喜んでいる表情を見ることや、やりとげられたという達成感を一緒に感じられた瞬間は、すごくやりがいを感じます。
3事業所回っていく中でいつも感じることは、利用者さんとの関係性を築き、お互いに歩み寄り、相談してくれるようになった時です。その方の気持ちが少しでも分かった時が嬉しいと思う瞬間です。

成谷

1年目の作業時、個性豊かで自分を強くもっている方々との関わりの日々でした。1年間関わりましたが、なかなか関わりの難しさを感じていました。2年目主担当になり、約10人を担当していましたが、1日に1人、1時間だけ個別に作業から離れて時間を取るようにしてみました。気が付いたらみんな心を開いてくれるようになりました。関係性の築き方を学び、小さき群の里で過ごした6年間は、1日1日にやりがいを感じていました。

司会

ありがとうございます。では、皆さんの仕事への想いなどが聞けたところで、今後、カナンの園でやってみたいことはありますか。

田之岡

今後のことではないのですが、ここ数年コロナ禍で利用者の方々と旅行ができていませんでしたのでみなさんと旅行に行きたいと思っています。現在は奥中山学園で、あまり旅行に行った経験がない方もいますので、仙台市や東京都など新幹線で行って、新しい経験をする様子を見てみたい思いがあります。

成谷

ののさわ事業所でも、以前は保護者と一緒の旅行がありましたが、最近はできていません。すごく大変だと思いますが、みんなで温泉に行くなど思い出作りになるイベントを行いたいです。
我々の働き方についても話しますが、利用者の方々の高齢化により、夜間の支援体制が必要になってきています。それに合った働き方、宿直ではなく、夜勤として構築していく体制を整えてほしいです。そうなると人材がほしいということになると思いますが、管理職が動くことだけではなく、自分たちもいろんなアイディアを出して、外にカナンの園の魅力を発信していきたいです。学生さんに現場の声を聴いてもらう場を設けることや、働きやすい仕組みを少しずつ作りあげていけば、よりよい人材が集まり、いい支援の形が作れると思います。我々がボランティアとして街の清掃活動をするなど貢献しながら様々な方々に知ってもらい、魅力を伝える循環ができればいいと思います。

澤村

カナン製品を販売に行ったときに、カナンの園を知ってもらうことが多いですが、もっと日常生活の中に自然にカナンの園が入り込んでいけるようになればいいと思います。アネックスカワトクで、カナンのパンをすごく褒めてもらってうれしかったです。その声をもっと広げたいと思いました。

成谷

私は実家が北上市なので、たまに沢山カナンのパンを買って帰り、近所に配っていますが、とても好評で近くでも売ってほしいと要望があります。あと、移動販売車とかもいいですね。お年寄りの方々も買いやすいと思います。

全員

それはいいですね。やりたい。

成谷

三愛学舎はIDサッカーとか力を入れているので、カナン杯みたいなのを開催し、自分たちの得意なところから発信するのもいいと思います。県内でフットサル大会を開催し、景品にカナン製品を提供するのもいいですね。
また、SNSの活用もいいですね。TikTokをうまく活用し売上が伸びた事業所もあるようです。

高橋

若者の取り込みが必要だと思います。年配の方はカナン製品を買いに来ますが、若い方は知らない人も多いのでSNSは活用できればと思います。

澤村

私は、やりたいことという枠ではないのですが、あればいいなと思うのは、利用者の方が家族と一緒に住める場所です。保護者が高齢になり家族支援が必要なケースも出てきており、まるごと家族支援みたいな場所があればいいなと思います。

高橋

私は、親御さんが高齢になり家族だけで出かけるのが難しくなってきているので、家族を含めた行事があるといいと思いました。となんカナンは就労系の事業所なので、働くこと以外、運動することや、遊びに行く余暇の時間の充実もできればいいと思いました。
事業所として継続していくには、若い人に入ってきてもらい技術を継承していくことや、若い方の意見が取り入れられるようになることが必要だと思います。そんな中で、職員は変わっていっても、利用者はずっとやりがいを持ち、楽しく続けられるような体制ができればいいと思います。人員の確保もしながらなので難しいと思いますが、そんなことを考えていました。

司会

いろいろと夢のある話しや実現させたい話しを聞けてよかったです。それぞれに多くの経験を重ねてきた皆さんですが、働き始めたころの自分を思い出し、そのころの自分に声をかけるとしたら、何と声を掛けますか。

澤村

背中をバンと叩いてやりたいです。気を張りすぎていて、ものすごく緊張してガチガチでやっていたと思います。子どもにも壁を作っていたと思うので、「もうちょっと力を抜いていいよ。」と伝えたいです。

高橋

盛岡で働くようになって思うのは、人とのつながりが多いことです。出会った人たちに支えられて頑張ることができています。1年目の自分には「人とのつながりを大事にして、利用者の方々にとって何がいいかを第一に考えて、初心を忘れずに頑張りなさい。」と伝えたいです。

成谷

ガチガチだったし、斜め下を向いているようだったと思います。「顔を上げて視野を広げよう!」と伝えたいです。また、「自信をもって!」とも伝えたいです。間違いもたくさんあったけど、そこでめげないで頑張ってほしいと伝えたいです。

田之岡

当時の自分に声をかけたいことは3つあります。1つ目は、「仕事でも、プライベートでも相談できる相手を作ってほしい。」です。2つ目は、「自然体であってほしい。」です。1年目うまくコミュニケーションとれなかったので、壁を作ってしまっていたので、距離感も大切だけど自然体でいけばいいと伝えたいです。3つ目は、「いろんな経験してね。」と伝えたいです。うまくいったこともあれば、いかなかったこともありますが、ポジティブにいろんなことに挑戦してねと伝えたいです。

司会

ありがとうございました。それぞれの思いがその頃の今の自分があるのかもしれませんね。
こうやってみなさんがカナンの園で活き活きと働いている様子を多くの方々にお届けできる機会になり、うれしいです。本日はありがとうございました。

CANAAN GROUP