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ことばひろい

機関誌より『ことばひろい』を掲載しました。

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第05回:『 「悩んでいます」 』
地域生活支援専門員 一戸舒也

「悩んでいます」
「悩んでいます」

N町のS保育園に通っている次郎君(仮名)は来春の就学を控え、このところ、みたけ養護学校奥中山校の見学や花巻養護学校の教育相談に出かけたりと、 忙しい日々を送っているようです。

次郎君のお母さんに「学校は決めましたか」と尋ねたら「まだ決めかねています」とのこと。 一年前、保育園に入園したころは、部屋の隅っこで高い所に上がり、宙を見ていた次郎君の姿がありました。 それが、保育所支援事業で保育士との相談を実施したり、療育教室へも参加するようになるにつれて、食事、排泄、言葉での指示了解などの成長を見せてきました。 だからこそ、お母さんは「地元の小学校に通えれば」とも思い始めているのです。 判断に悩む時期でしょう。

十月になると市町村の就学相談が始まります。 保護者が配慮を要するわが子の教育の場を、わずか半年で選択するのは容易ではありません。 私たちはできるだけ一〜二年の期間をかけて地元の小学校や養護学校を見てもらったり、療育教室を紹介したり、保育所支援をして、発達支援にも取り組んでいます。

四〜六歳という年齢は、保育・療育の場で適切な配慮(発達支援)をすることで、ぐんと変化する時期でもあります。 例えば、総合相談センターの巡回相談にやってきた仁君(仮名)。 会場が療育(幼児)教室だったので、慣れたようすで父母を尻目に先頭を切ってやってきました。 顔を合わせた途端「やあ!」と手を挙げて挨拶をしてくれます。
 「今日は誰と来たの?」
 「あのね、オカアサン、オトウサン、○▽×○△×…」

(…あれあれ、ずいぶん話すようになっているな、どうやら生まれたばかりの弟のことをしゃべっているようだぞ、意思表示も出てきた。 お母さんは養護学校に行かせたいといっていたけど、どうなったかな)

 「迷っています。せっかくいままで保育所のみんなのなかでやってきたし、言葉も出てきたし…。できれば地元の小学校に行けたらなあと考えていますけど、 ついていけるかどうかも心配もあるし…悩んでいます」

できるだけ親元で、その子に見合った専門性の高い教育をと望むのは、親としての当然の思いです。 納得できる判断が得られるようにするには、十分な情報が必要です。 仁君のお母さんにもさらなる判断材料を提供するため
 「今度、N市で県の教育相談がありますから行ってみましょう」
と提案したところ、
 「ぜひお願いします」
との即答が返ってきました。

幼少期・学童期は、いわゆる学校教育の側面だけでなく、親元や地域の人たちのなかで「自分」をつくっていく時期でもあります。 養護学校に通うことになると、それまで保育所で一緒だった仲間とのふれあいは減少しがちですが、一方で、発達障害に配慮した専門性の高い教育を受けることにはなります。 地元の小学校と養護学校、どちらも一長一短です。

「その地域で育つ」という観点が大切だと思います。 どの学校を選んでも不足が生じるとしたら、その不足を補う方法を保護者や行政と一緒に生み出していくことが、私たちの課題でもあります。 親御さんと共に、私たちも
 「いま、悩んでいます」。

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